学習塾ブログ / ベストの広場6月号(塾長コラム)
ベストの広場6月号(塾長コラム)
本音は何か
国会で「前向きに検討します」という大臣答弁は、結局のところ本音は「何もやらない」ということを意味するとよく言われます。政治家は角が立たない言い方をすると。日本人は婉曲な表現を好みますから直接的な言い方を避ける傾向があります。
作家の清水義範さんの古い本を読んでいたらそういう事例がたくさん出てきました。たとえばお見合いのお断りの言葉。
「先方がお地味なので」(いかにもケチそう)
「お派手でいらっしゃるから」(あの娘どういう躾がされたんだか)
「家風があわないようで」(当人はまあまあだけど、親がねえ)
ユーモア小説をたくさん書いている清水流言い換えですね。
新人対象の文学賞の選評の言葉というのもあり、なるほどと思う。
「よく書けている」(若いのにそつがない。)
「これはこれでひとつの才能と言うべきだろう」(私はこういう作品は嫌いだ。)
「そつなくまとまっている」(面白くない)
「一応の水準に達している」(この程度の作品が最終選考に残らなければ、選考委員 なんてやっていられない)
なるほど、日本的な婉曲話法の裏側にはこうしたシニカルな見方もあるのかと納得してしまいます。まあ、確かに受賞作や推薦する作品には「新しい感性の出現」とか「心憎いまでに巧みなストリー展開」などの褒め言葉がありますね。
今回、最後にご紹介したいのはテーマは少し離れますが、過去に出題された高校入試問題についてです。
『サザエさん』と『ちびまる子ちゃん』の家庭の会話の様子からわかる人間関係の共通点を十五字以上二十字以内で答えよ。
「えっ、本当にこんなのが出題されたの」という感じですが、「国語入試問題必勝法」なるユーモア溢れる小説を書いている清水義範のことだから探し出してきたんでしょう。おそらくこの問題は資料として家族の会話場面がある二つの漫画の一部が引用されているのだと思います。当然これは社会ではなく国語の問題かと思いますが、みなさん出題者の本音はどこにあると思いますか。受験生は悩みますよね。何か意表をつく解答を書くと加点されるのかなとか。常識的には「三世代家族なのでコミュニケーションの幅が広い」みたいなことを書いてほしいのか。おっと20字を越えてしまった。
これは模範解答があるそうで、それによると「両方の家庭とも親子関係が健全である」。ウーン、そうきたか。ただ受験生はこうした「しのぎ方」が出来て一人前なのかなと思う。
ちなみに、親子3人の核家族の場合、父-子供で1通り式に場合の数で人間関係の数を計算すると3C2=3通り,7人家族のサザエさんの磯野、フグタ家は7C2=21通りあります。家族の構成員の数はコミュニケーションの豊富さと大いに関係があります。核家族の場合、子供が家庭に閉じこもる弊害はこのあたりにもあります。学校に於ける友人関係や親戚関係、隣人関係のあり方は、子供の社会的成長と密接です。