学習塾ブログ / Fさんの教訓

2024年12月04日

Fさんの教訓

先日,中3受験生対象に「入試直前ガイダンス」そして「第4回ハイレベルゼミ」を行いました。
毎年,これらのイベントの中でお話しするエピソードがあるので,今回紹介します。

今からちょうど10年前のことです。
小平教室に通う中3受験生Fさんは,学校成績や模擬試験の結果も良好,かつ生徒会副会長を務めるなど,調査書も申し分ない評価をもらっていました。
重要な2学期期末テストも順調に終え,仮内申は素点で9科44,当初からの志望校である都立上位のK高校を受験することが決まりました。
調査書もいいのですから,必然的に推薦入試からのチャレンジです。

ところがFさん,受験の方針が決まったまさに12月初旬,体育でバスケットボールを競技中,なんと利き腕の右手の指を骨折してしまったのです。さらに悪いことには,利き腕で字を書けなくなってしまいました。

なんという不運。
なんという運命のいたずら。

しかし,Fさんはそこでいじけたりひねくれたりもせず,ケガの翌日から反対の左手で書く練習を始めました。
もちろん,左手の筆記練習をしたからといって,一朝一夕に上手に書けたり早く書けたりはできません。
これまで時間内で解き終わっていた過去問題などは,まったく解ききれない状態になってしまいました。
このままでは,上位難関校であるK高校の一般入試では,合格などほど遠い状態です。
問題が解けるのに書けない,Fさんの胸中はいかほどだったでしょう。
結局,受験の方針を変え,K高校の推薦入試が不合格であれば都立一般入試では受験校のランクを大幅に下げることにしました。

しかし,推薦入試に向けて好材料はそろっており,チャンスはありました。
一つは,内申・調査書がよいこと。
二つ目は,K高校の推薦入試は小論文を課します。小論文は作文ほど字数が多くない(負担や時間が少なく書ける)。
三つ目は,小学校からベストに通い,作文講座や授業で小論文の練習を重ねてきたこと。
さらに,10代の育ちざかりだからでしょう。ケガの快復も思いのほか早く,推薦入試当日には利き腕で書ける可能性も出てきました(ただ,以前のようには書けません)。

12月中旬から前日まで,小論文対策,面接対策,そして集団討論対策をなんとか行い,FさんはK高校の推薦入試に臨みました。

その結果。

なんと,無事第一志望校であるK高校に合格できたのです。
もう,本当にどうなってしまうのか,ハラハラドキドキでしたが,この奇跡ともいえる難行をFさんはやってのけたのです。

さて,ここに教訓が2つあります。

一つは,日頃から小論文・作文の練習を重ねてきたこと。
結果的に,これを継続してきたから入試に役立った。選り好みせずまんべんない勉強をしていたことが,ここでものをいった。
二つ目は,気持ちの切り替えが上手くできたこと。
ケガの翌日からすぐに左手で練習を始めたり,また推薦入試の各対策でも,「後悔」よりも「前向き」になり取り組めたこと。
とくに指導する私の立場からでいうと,Fさん本人が決して落ち込まず向上心をもってくれたことが何より救われました(本人が感じていた絶望感は,底知れないものだったはず)。

Fさんは大事なことを教えてくれました。

じつはこのエピソードには続きがあります。
この3年後,同時期の「中3ガイダンス」で受験生たちにこの話をした直後,同じく利き腕を体育で骨折してしまい書けなくなった生徒さんが出てしまったのです。
唖然・・・
幸いこの生徒も,結局は第一志望校に合格できたのですが,それは次の機会にでも書きましょうかね。

受験生のみなさん,この時期,体育ではくれぐれも必要以上に張り切りすぎないようにしてくださいね。
お願いします。

小平教室 高橋