学習塾ブログ / 今も昔も変化のない「感情的なもの」

2020年09月30日

今も昔も変化のない「感情的なもの」

秋という季節は暑い時期が過ぎ、少し寂しいようなセンチメンタルな感情を持つことが多くなる時期だと思います。
突然ですが「エモい」という言葉があります。学習塾のブログで、そんな若者言葉を取り上げるなんて、教育に相応しくない、などと思ってしまうこともあるかもしれませんが、この言葉には世代を超えて国語的な大きな意味がある、と思ったので少しお話ししてみたいと思います。

 エモいは通常、英語の「emotional(感情)」を由来としており、感情が高まって強く心が揺さぶられたときや、気持ちをストレートに表現できないとき、哀愁を帯びている物悲しい様子に主に使われる言葉です。
 エモいという言葉一言で片づけてしまえるなんて便利だ、と思ってしまいがちですが、どうしても「言い表せないくらいの感動的な良さ」を表すには言葉にするには難しいと言うこともあると思われます。今の人は何でもかんでも略したり、言葉にしようとしなかったりする、という意見もありますが、感動を覚えること、表すことは昔から今もなお続く日本の良い文化ではないでしょうか。
 
 国語で詩や俳句、短歌、古文といったものを勉強する際、「よくわからない」「何を言っているのだろう」と感じるという経験は、かなり多くの人にあるのではないかと感じます。古文では「いとをかし」などとよく書いてあります。その意味は「趣深い」になります。では趣とはなんだろう、と調べると「味わい、面白み、感じ」と意味が出てきます。そうですね。なんといいますか、詳しくありません。雰囲気です。雰囲気が良いということですね。では雰囲気がいいってどういうこと……とこのままでは調べても調べてもわからないまま続いてしまいます。言葉の本質を理解しようとしても、この部分はなかなか難しいのではないかと個人的に思います。
つまり、昔の人も、言葉にできないような「なんかいいな」というものを感じて、その雰囲気をうまく言葉に表せず、「いとをかし」と言っていることが多いのではないか、と私は考えました。あくまで個人の憶測なのですが。

少し寂しげな雰囲気には感情を揺さぶられるような効果がある。それは、言葉は変われど今も昔も変わらぬ感情です。皆さんもきっと持っていることでしょう。
国語の文章には昔の人たちが感じた「なんかいいな」が詰まっています。その「なんかいいな」をどうしても言葉というもので伝えたくて、昔の人たちは頑張って文に起こしています。
「エモい」ことをなるべく自分の持っている表現方法で外に出してみる、それが国語の力を養うことにつながるのではないでしょうか。そうすることで、昔の人たちの苦労も分かり、「エモい」ことを共有できるかもしれません。「エモい」のヒントは皆さんが楽しんでいる漫画やドラマ、映画にも転がっています。なぜ悲しいシーンで雨が降るのか……なぜ夕焼けのシーンは感動できるのか……「エモい」ことを突き詰めて考えてみると国語力が身につく、のかも、しれませんよ。

小川教室 中村