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相手を強く意識する「日本語」
「日本語は難しい」と言われることがあります。発音自体は、他の言語と比べてもかなりシンプルですが、漢字・ひらがな・カタカナと、使用する文字が複雑なことが難しさの要因の一つでしょう。そして、もうひとつ、難しさにつながるものとして特徴的なのが「敬語」の存在です。
日本語における敬語は、尊敬語・謙譲語に加え、丁寧語や美化語などもありとても複雑です。これらの敬語は時代や地域によってさまざまな要因が絡み合い、長い時間をかけて成立してきたものです。
古代では、人間ではないものに対して使う「自然物敬 語」というのがありました。「お日さまがお昇りになる」 といった表現がこれにあたります。中世になると、その 敬語が天皇や貴族に対する言葉として応用され、その後、身内に対しても使用されるようになっていきます。敬語 の発達には地域差もあり、とくに近畿を中心とする西日 本でより発達しています。なかでも京都は、天皇から庶 民まで、社会のなかに幅広い身分・階級の差があったこ とから、複雑に敬語が発達していきました。
敬語は、相手を強く意識し相手によって自分の立場が微妙に変化するという、日本人の感覚の特徴を反映しているといえます。
この特徴は、敬語以外にも表れています。たとえば、人称代名詞もそのひとつです。英語では「I」「You」でシンプルに表現される一人称や二人称が、日本語では「わたし、わたくし、僕、自分、おれ…」「あなた、あんた、きみ、おまえ…」などさまざまな言い方があります。相手がだれであろうが私(I)は私(I)、あなた(You)はあなた(You)という英語に対して、日本語では、相手との上下関係や親密さの程度など、相手を強く意識することで、使い分けされています。
敬語や人称代名詞に限らず、日常の会話の中で、相手 のちょっとした話し方の違いで、馴れ馴れしく感じたり、よそよそしく感じたりした経験が、みなさんにもあるの ではないでしょうか。それらも、自分と相手との関係性 や立場などを強く意識することから生じる感覚といえ るでしょう。
異なる言語は、正確には翻訳できません。それは、それぞれの言語に、人々の考え方や感じ方が強く反映されているからです。言語の違いや特徴を理解することは、その国や地域の人々のことを理解し、私たち自身についても深く理解することにつながるでしょう。
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